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賢い生命保険の見直し方

プロローグ

100年に一度といわれる経済危機がいまだに終わらない状況です。

この経済危機を乗り越えていくために、家計の見直しが必要となってきましたが、今までのような「節約」だけではムリがありそうです。

企業がこの経済危機を乗り越えるために抜本的な経営の見直しを進めていますが、個人の家計においても状況は同じです。家計もこの機会に抜本的な見直しが必要になっています。

家計の抜本的な見直しとは?
それは、変動費だけではなく固定費を見直すことです。

これまで、主婦の方々は、日々の買い物で10円単位の節約を続けてこられたと思いますが、これからは固定費を見直さないと追いつかない状況になりそうです。

家計で固定費とは、一般的に「住居費(住宅ローンや家賃)」、「自動車関連費」「教育費」があげられます。

これらの固定費を見直すことが必要なのですが、その反面、見直し自体も、決断を迫られるような内容になります。

実は、忘れかけている固定費がもうひとつあります。

それは「生命保険料」です。

生命保険は20年、30年と長期にわたって支払うものです。この見直しは思いがけなく大きな節約になる場合が少なからずあります。

必要保障額


生命保険を見直す際に、まず考えることは「どれだけの保障」が「どれだけの期間」必要なのか?ということです。
これが必要保障額になります。

この必要保障額の考え方には、大きく2とおりの考え方がありますが、今回は基本的な考え方から。

まず、ご主人に万が一のことがあった場合、残された家族が生活していくためにはどれだけの金額が必要なのかを考えます。

例えば、基本的な生活費が月20万円で20年間分必要だとすると、これで4,800万円必要になります。

つぎに、教育費がどのくらいかかるのかを加算します。教育費は子供一人あたり1,000万円程度必要ですので、まだ小学生くらいのお子様が二人いると、教育費で2,000万円程度加算します。

そして住居費です。現在賃貸住宅にお住まいの方は家賃を加算する必要があります。月10万円で20年間分だと2,400万円になります。すでに自宅をお持ちの方は家賃の加算は必要ありません。

ここまでの合計金額で、およそ9,000万円になります。

ここから、遺族年金など受け取れる金額を差し引いていきます。

一般的な目安としては、遺族厚生年金で月に5~8万円程度、20年間でおよそ1,500万円くらいは受取ることができます。
遺族基礎年金は、高校生以下のお子様がいる場合だけ受取ることができます。月に6~8万程度受取れますが子供が高校を卒業するとおしまいですので、受取る期間はお子様の年齢次第ということになります。今回は例として10年間受取るとすれば、およそ800万円程度になります。

ご主人が会社員の方は、遺族厚生年金と遺族基礎年金が受け取れますが、自営業の方は遺族基礎年金だけしか受け取れませんので気をつけてください。

また、会社員の方であれば死亡退職金が考えられます。金額は勤務先の会社によって違いますので、例として1,000万円としておきましょう。

ここまでの差し引く金額はおよそ3,300万円です。

まだ5,700万円足りません。
この5,700万円を必要保障額と考えることもできますが、一般的にはご主人に万が一のことがあった場合には奥様も働いて収入を得ることが考えられます。

仮にパートで月10万円の収入を得るとしたら、20年間で2,400万円になりますので、この金額をさらに差し引くと必要保障額は3,300万円ということになります。

もし、奥様が働きたくないということであれば必要保障額は5、700万円だということになります。

もうひとつの必要保障額

生命保険の必要保障額の考え方は、もう少し簡単な考え方もあります。

それは、毎月のお給料を保障するという考え方です。

例えば、月給30万円の場合、ご主人に万が一のことがあり、残された家族は生活費が20万円必要だとしましょう。
遺族年金が月に10万円支給されるとすると、毎月10万円が不足します。

この不足する10万円を生命保険で保障してもらおうという考え方です。

とてもシンプルでわかりやすい考え方です。

この場合でも、毎月の生活費がどれくらい必要なのかについては、家賃や教育費なども含めて考えます。

死亡退職金などは、ボーナスの代わりとして別に貯蓄しておきます。

ここでもポイントは、遺族年金がどれくらい支給されるのかということです。
会社員(公務員)の方は遺族厚生年金(公務員は共済年金)と遺族基礎年金が支給されますが、自営の方は遺族基礎年金だけとなります。

しかくとさんかく


必要保障額の考え方には二つありますが、いずれにも共通することは、必要保障額は年々減少していくということです。

わかりやすく単純化した例で、たとえば、子供が大学を卒業するまでの20年間、毎年200万円のお金が必要だとすると、現時点では20年×200万円=4,000万円が必要ですが、1年後は19年×200万円=3,800万円となります。

10年後は10年×200万円=2,000万円と、毎年減少していくことになります。

一方、5年以上前に生命保険に加入された方のほとんどは、「定期保険」もしくは「定期付終身保険」という保険に加入されています。もし良かったら、自分の保険証券を確認してみてください。

この定期保険というのは、一定期間(たとえば60歳まで)、一定金額(たとえば4,000万円)を保障しますというものです。

この保障内容を図で書くと長方形(しかく)になります。
ところが、本当に必要な保障金額は、最初は大きな金額でも、毎年減少していきます。

この本当に必要な保障内容を図で書こうとすると、さきほどの長方形(しかく)を左上から右下までの直線で切り落としたような三角形(さんかく)になるのです。

定期保険

定期保険、もしくは定期付終身保険は、かつては生命保険の主流でした。

しかし、この定期保険はほとんどの人にとっては、本当に必要な保障額とはうまくマッチしません。

必要保障額は子供ができた場合に増加しますが、もうこれ以上子供は生まれないという状況になれば、毎年減少していくものです。

定期保険は、たとえば30歳から60歳まで30年間5,000万円の保障を契約したとすると、30歳の時に万が一のことがあった場合はもちろんですが、59歳の時に万が一のことがあっても5,000万円支払われます。

一見、ありがたいようですが、当然、必要以上の保険料を支払っているということです。
この保険料は長期間支払い続けるものですので、総額は驚くような金額になる場合も少なくありません。

現在、定期保険もしくは定期付終身保険を契約しているという方は、自分の必要保障額はどれくらいなのかきちんと考えてみることをお勧めします。

収入保障保険


定期保険や定期付終身保険に代わって、現在主流となっている生命保険が「収入保障保険」です。

この保険は、必要保障額の考え方がわかりやすいことと、実際の必要保障額にマッチした保障内容で設計しやすいこと、そして定期保険から比べると保険料がとても安いことなど、メリットが多い保険です。

収入保障保険は、ご主人に万が一のことがあった場合、お給料と同じように保険金が支払われるもので、保障金額(保険金額)を月額で設定します。

たとえば、給与収入が手取で月30万円の方だとすると、残されたご家族は一般的に今までの3/4くらいの生活費が必要だと考えられます。(ご主人のおこずかいなどがいらなくなるため)

ここでは25万円必要だとしましょう。

一方、ご主人に万が一の場合、一般的には遺族年金が支給されます。年金の金額は会社員なのか、自営業なのか、子供が何人いるのかなどで変わってきますが、小学生の子供がいる会社員のご家族だとすると月に10万円程度は遺族年金が支給されます。

必要な生活費25万円に対して遺族年金が10万円支給されると、不足額は15万円です。

この15万円を生命保険で補うという考え方です。

保険料のちがい

定期保険と収入保障保険の違いを書きました。

一般的な会社員のご家庭であれば、収入保障保険のほうが必要保障額にマッチしていますが、保険料はどうでしょうか?

以前、定期保険を図で表すと「長方形」、収入保障保険は「三角形」だと書きましたが、保険料はこの図の面積に比例しているとお考えください。

長方形と三角形、底辺の長さと高さが同じであれば、三角形の面積は長方形の半分です。

実は保険料も同じことが言えます。

同じ必要保障額でも収入保障保険は定期保険の半額以下ですみます。

生命保険は「高額商品」です。毎月は2~3万円でも何十年も支払う総額は大きな金額になります。

もしも、現在、定期保険、定期付終身保険をご契約の方であれば、一度、収入保障保険を検討してみてください。

多分、大きな保険料の節約になるのではないかと思います。

保険料をさらに安く



定期保険から収入保障保険へ見直すだけで、保険料は大きく節約できますが、さらに安くする方法もあります。

保険を見直す際に、よく、どこの保険会社は保険料が安いのか?とご質問をいただきますが、実はどこの保険会社でも保険料に大きな違いはありません。

それより大きい違いは、契約条件の違いです。

生命保険の保険料は、たばこを吸わない方(非喫煙者)は、保険料が安くなるケースがあります。
保険会社によって違いはありますが、およそ10~20%も安くなります。

他にも、「健康体」であることや、ゴールド免許を持っていると安くなる場合もあります。

「健康体」は一般的に「BMI」と「血圧」で判定します。「BMI」は体重と身長の割合を数値で判定するものです。基準は保険会社によって違いますが、5%程度保険料が安くなります。

そのほかの方法で、「まとめ払い」で安くすることも可能です。月払いを年払にすることで2~3%程度保険料は安くなります。
ただし、まとめ払いは良く考えてからにしてください。たとえば、毎月2万円の保険料は払えても、年払いで20万円以上となると払いにくいものです。

また、最近では保険料をクレジットカードで払える保険会社が増えてきました。
カードで払えば、ポイントが貯まります。月々の金額はそれほどでなくても、毎月払うものですので、ポイントも決してあなどれません。

特約を見直す

生命保険には、多くの特約があります。
なんだかよくわからない特約がいっぱいついていませんか?

「三大疾病特約」「傷害特約」「婦人病特約」など本当に自分に必要なのかを見直していくことも大切です。

特約の中でも注意したい特約が「入院特約」です。
名称は保険会社によって多少異なりますが、要は病気やケガで入院したときに1日につき5,000円とか10,000円とか支払ってくれるものです。

この入院特約は2つ気をつけていただきたいポイントがあります。

まず、ひとつめが保障期間です。ほとんどの契約は80歳までの保障だと思います。
「80歳まで長生きするかどうかわからない」と思われるでしょうが、男性の平均寿命が約80歳、女性が約86歳です。

入院のリスクは、年齢を重ねれば重ねるほど高くなります。
ずっと保険料を払い続けてきたのに、入院したときには保障が終わっていたなんてことにならないように気をつけてください。

もうひとつが、保険料です。
多くの方は、保険料払込期間が60歳まで、もしくは65歳までになっていると思います。

保険料払込期間が60歳であれば、もうそれ以上保険料を払う必要は無いと考えるのが普通ですが、「入院特約」は例外です。
一般的に、保険料払込期間が終わる60歳から、入院特約の保障が終わる80歳までの20年間分の保険料を、60歳の時点で一括で払ってくれと言われます。

その保険料は、何十万円、場合によっては100万円以上にもなります。

払わなければどうなるのか?
当然、「入院保障」はなくなります。

保険料払込期間が終了する時点で、保険料をまとめて払わなければいけないことは、証券を見てもわかりにくいものです。
一度、契約している保険会社に確認されることをお勧めします。

相続税対策


ご主人に万が一のことがあった場合、必ず起きることが「相続」です。

相続税法の改正があり、2011年4月以降、基礎控除は「5,000万円+相続人1人につき1,000万円」から「3,000万円+相続人1人につき600万円」となりました。

これまで、あまり相続税の心配をされなかった方でも、不動産をお持ちの方など相続税対策が必要な方は少なからずいらっしゃいます。

相続税対策にはさまざまな方法がありますが、生命保険も対策のひとつです。

生命保険の保険金は、相続人(未成年者、障害がある人、生計が同じ人)1人につき500万円までは相続税の対象にはなりません。
奥様とお子様2人の場合、500万円×3=1,500万円まではそのまま現金で受取ることができます。

相続財産のほとんどが不動産という方は、相続税を支払うための現金を確保することが困難です。
現金を確保するために相続した不動産を売却すると、さらに所得税がかかってきますので、一般的には賢い方法とは言えません。

この相続税を支払うための現金を生命保険で確保するという考え方です。

相続税法の改正により、これまで以上に多くの方が相続税支払の対象になってくるものと予想されますので、注意が必要です。